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今年もひまわりを探して。(日記)

連続自動更新7日目。
一応これで連続自動更新は最終日にします。

最終日も、今は非公開の過去日記から。


=====


「ひまわりの妹」


僕は小児ぜんそくだったんだ。
しょっちゅう入院していた。

僕が小学校の3年の時だった。
例によって入院することになった病室には、
他に3つのベッドがあった。
そのうち2つは、空だった。
僕の隣のベッドは、僕よりずっと前から
居るらしい女の子だった。

点滴を打たれて大人しくしているしかない僕に比べ、
その子ははるかに元気そうだった。
僕は、点滴がくっついている自分の姿を
その子に見られるのがなんか恥ずかしくて
その子の方はなるべく見ないようにした。


その夜中 僕は発作を起こした。
ぜいぜい言って こんこん咳をして とても苦しかった。
ところが 内気な上に考えすぎる癖があった僕は
そんな時ですら

夜中に看護師さんを呼んで
たいしたことなかったら申し訳ないとか
夜中に明かりをつけられたら 隣のその子にも悪いし・・・
多分 夜中の看護師さんの定期見回りがあるから
それまでは・・・
様子を見ているうちに治まるかもしれないし・・・

などと考えながら、
半身を起こして(寝ていると余計苦しい)
一人で真っ暗な中、ぜいぜい言っていた。
だが、当然のように発作は治まるどころか悪化し、
僕は目に涙を浮かべて必死に息をするだけで精一杯だった。

その時、ようやっとベッドを囲んでいるカーテン
(夜や回診時などに各ベッドを仕切る)が開いて、
「苦しいの?」という声が聞こえた。
同時に、手が背中をさすってくれた。
やっと看護師さんが来てくれたのだ。
僕はちょっと安心して頷いたが その後の記憶はない。


翌朝、目が覚めるとベッドの横には
ごっつい機械が置いてあって
マスク付きの吸入ホースが伸びていた。

あぁ 吸入したんだな。
僕がまだぼうっとしている頭で そう思ったとき
隣のベッドから声がした。

「だいじょうぶ?昨日は苦しそうだったね・・・」

僕は またそんな醜態を見られたのかと
気恥ずかしくて その子に背中を向けた。

だが 
ちょっと待てよ。
その声。
昨日聞いたような。
もしかして あの声は。

そうだったのだ。
夜中に発作に気付いて背中をさすってくれたのは
その子だったのだ。
しかも その子は看護師さんまで呼んでくれたらしい。


そう知って でも僕は恥ずかしくて 
まともにお礼も言えなかった。
ただ、
「うん、もう大丈夫だよ」
とだけ つぶやくように言った。
その子は にっこり笑って 
「そう!良かったねー!!」
と言った。
その子の後ろの窓から輝く太陽より
その笑顔は輝いていた。


その朝 僕は初めて 
その子についていろいろなことを知った。

その子の名前 家族 住んでるところ 学校
僕より一つ下なこと
それから 検査入院なんだけど
ちょっと引っかかるところがあるからと
なんだかんだで長引いていること。

僕たちは急速に仲良くなった。
発作も峠を越え、もう点滴も取れた僕は
その子と毎日 いや 「毎晩」も遊んだ。

夜の病院でのかくれんぼは とてもスリリングだった。
僕がわざと見つかりやすいところに隠れていると
その子はすぐにとんできて
「そんなとこ カンタンだよー!」
とケラケラ笑って僕の腕をつかんだ。
響いた声にやってきた看護師さんにひどく怒られても 
うつむきながら二人で顔を見合わせてクスクス笑った。


その子は僕を「お兄ちゃん」と呼んだ。
僕もほんとに妹が出来たみたいで 悪い気はしなかった。

「お兄ちゃん、好きな子いるの?」
ある日 不意に聞いてきた。
「な、なんだよ・・・」
僕はいきなり顔が真っ赤になった。
「あー!いるんだー!!」
「う、うるせー!お前の知ったことか!」
乱暴に毛布をかぶって 背中を向けた。
「妹」は それを見てまた 
ケラケラと明るい笑い声を立てていた。

それからは 何かにつけて「好きな子・・・」
とつぶやき、僕をからかうのだった。
実は、僕には当時、好きな子も何もなかったのだが
その子が僕の反応を面白がるので
僕も「お兄ちゃん」として、
わざとからかわれてあげていたのだった。


そんなこんなであっという間に3週間が経った。

ある朝、先生が回診で言った。
「もう大丈夫だね!午後にでも退院しよう!」
「え・・・?」
僕は 不意に訪れた「慶事」に目をぱちくりさせた。

目の前の先生、看護師さんやベッドの横で
お辞儀をしている母親よりも
閉まっていたカーテンの向こうで
寝返りの音が聞こえたことが気になった。

母親が手続きをしに行った時に 
カーテン越しに呼びかけた。

「聞いたか?すぐ退院だってさ!お先に~!!」 
わざと明るく言ってみた。
「うん!良かったねー!!」
いつもの明るい声が返ってきた。
でも、明らかにいつもの調子ではなかった。
僕は、何も話せなかった。
その子も、鼻をすすっているだけだった。

それから それぞれの母親がやってきて
互いにあいさつしたりで 病室がバタバタし始めた。
僕は 何となく居づらくて 
トイレと言って病室を出た。

・・・かといって行くところも無いので
仕方なくちょっとだけトイレに行って
病室の近くに戻ってくると 
開いたドアの向こうから泣き叫ぶ声が聞こえてきた。

「どうして!?なんでアタシは退院できないの!!」
「なんでお兄ちゃんだけ行っちゃうの!?やだよ!!」
懸命にお母さんがなだめているようだった。

僕は入るに入れず、そばの壁にもたれかかっていると
やはり病室に居づらくなったのか、母親が出てきた。
そして僕を見つけると、無言で僕の肩を抱いて 
「先生や看護師さんににあいさつに行きましょう」
と言った。
・・・今までの入院ではそんなこと 
一回もしたことがなかったのに。

しばらくして病室に戻った僕は 
なるべくその子の方を見ないようにして
黙々とパジャマから普段着に着替えた。
昼食を食べたらいよいよ退院だった。

その時、その子は急に言った。
「お兄ちゃんの分のプリンも食べたい!!」
味気ない入院食の中では、プリンは非常に
楽しみなデザートなのだ。
僕もその子もプリンは大好物だった。

「えー?」
僕はわざとニヤニヤしながら言った。
「どうしようかなー?」
「ほら、だめよ、お兄ちゃんに悪いでしょ!」
その子の母親がたしなめた。
が、その子はがんとして聞かなかった。
「やだ!どうしても2つ食べたいの!!」
「じゃあお母さんが売店で買ってきてあげるから。」
「やだ!いますぐ食べたいの!!」
そこで 僕は言った。
「いいよ!あげるよ!」

「妹」は、その日初めての輝く笑顔を浮かべた。
でも、今すぐ食べたいと言っていたくせに
やっぱり後でのお楽しみにするのと言って 
引き出しにしまいこんでしまった。


意外なほどあっさりとあいさつをして
僕は母親に連れられて家に戻った。
久しぶりの家に 懐かしさを覚えたが
同時に 何か忘れ物をしたような気もしていた。


それからほとんど毎日 学校が終わると僕は
「妹」の面会に行った。

そうして一ヶ月ほど経ったある日 「妹」は言った。
「ね 学校で好きな子に毎日会えてうれしい?」
にやにやしていた。
「なんだよ またその話かよ!やめろよー!」
僕もわざとらしくにやにやした。
「えへへへへー!顔赤いよ~!!」
ケラケラと笑った。

「・・・明日、手術なんだ・・・」
不意に言った。
「え?」
驚いた。
「ちょっと・・・こわいなー。・・・なんて~!!」
無理に笑っていた。
「・・・」
「・・・」
「大丈夫だよ!」
やっと言った。
「そうかなぁ・・・」
うつむいた。
「・・・」
なぜか不安になった。
「なんてね!大丈夫に決まってるじゃん!!」
逆に励まされた。
お互い、笑い合った。

「ね!」
「ん?」
「手術したら、何くれる??」
「何で僕がお前に何かあげるんだよ」
「いいじゃん!何かちょうだい!」
「うーん・・・わかったよ 考えとくよ!」
「えへへー」
夕日に照らされながら 輝くように笑った。


次の日 僕は授業もうわの空で 
何をあげたらいいのかずっと考えていた。
そして 学校が終わると その足で 
ちっちゃな花束と プリンを買って病院に行った。

だが 手術は まだ終わっていなかった。
手術室の前に行こうとしたが 
その子の家族が心配そうにしているのが見えたので
慌ててきびすを返してしまった。

その夜は なかなか眠れなかった。


翌日 学校から帰るなりランドセルを
紙袋に入れた昨日のセットに持ち替えて
病院に行こうとすると 母親に呼び止められた。

「なに?あとでに・・・して・・・よ?」
一刻も早く行きたいのにと いらいらしながら振り返ると
母親の表情は いつになく険しかった。
そして その目は潤んでいた。

「・・・なに?」
心臓がバクバクした。

「・・・」
僕は紙袋をドサッと落とした。
全身の力が抜けた。
その場にへたりこんだ。

うそだろ。
いつまでも 心臓が 揺れ動いていた。
そっと 母親が抱きしめてくれた。



次の日 線香臭いお寺に母親と行った。
たくさんの花と 黒い服に囲まれて 
「妹」は黒い枠の中で 相変わらず輝く笑顔を見せていた。


それを見た瞬間 僕はたまらず泣き出した。

なんだよ おととい あんなに元気だったじゃんか
うそだろ? また僕をからかってんだろ?
いつかのかくれんぼみたいに 
その花の後ろから
ばあーって 僕を驚かそうとしてるんだろ?

一生懸命考えたんだぞ 何がいいのかって
こんなちっぽけな花束でも 
こづかいぜんぶはたいて買ったんだぞ 

なあ 受け取りにこいよ 
大好きだろ プリン
そしてまた 笑うんだろ?
ケラケラって!?


張り裂けそうな思いで お線香を立てた後
「お母さん」に、他の部屋へと呼ばれた。
そこで初めて、本当の病気を知った。

それから、手紙を渡された。

「手術の前の晩 書いてたのよ・・・」
真っ赤な目をハンカチで拭いながら 手渡してくれた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

お兄ちゃんへ

あした 手術だよー
ドキドキしちゃうから 何となく落ち着くために
この手紙を書いてまーす!

星がきれいだよ!
でも毎晩だもん 見あきちゃった
入院ってたいくつだよね

でもね お兄ちゃんに会って2か月は
とっても楽しかったよ!

お絵かきしたでしょ
かくれんぼしたでしょ
それから いっぱいお話ししたでしょ!
楽しかったあ!

お兄ちゃんが退院してからも
毎日来てくれて ありがとね!

でも 明日が過ぎたら やっとお外で遊べるね!
そう考えたら ちょっとコワいけど 
でもはやく 明日にならないかなあ! って!!

ねえ お兄ちゃんは何のお花がすき?
アタシはね、ひまわり。
太陽に向かって すーって立って
きらきらしてるの。
かわいくてかっこいいよね!

いっぱい いーっぱい遊ぼうね!
それでね お兄ちゃんが 好きな子に
もし ふられちゃったら 
その時は アタシが 
およめさんになってあげるからね! なんてネ!

お兄ちゃん ありがと!
大好きだよ!!

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

僕は また泣き出してしまった。
涙が 大切な手紙の上に落ちてしまって
慌てて こすったら 「兄」の字が滲んでしまった。


「苦しいの?」と言ってさすってくれた手
「治ったの?良かったねー!」と言ったときの笑顔
「えへへへー」と笑った声
「カンタンすぎるよー」と 僕を掴んだ手
「ちょっと・・・こわいな・・・」と うつむいた顔
「好きな子」を 執拗に 気にしてたこと・・・


僕は たまらず 駆け出した。
気が付くと近くの公園の 築山の上に居た。

ばかやろー 勝手に「退院」しやがって!
遠くに見える病院に向かって叫んだ。

でも その時 「退院」の日のことが思い出された。
そうだ 「妹」は 「良かったね!」って 
言ってくれたじゃんか。

僕は 「妹」を心底尊敬した。

そして 涙を拭うのも忘れて 空に向かって言った。
「もう 病気で苦しまないよな!
おもいっきり遊んでるかい?
・・・良かったな!!・・・良かったんだろ?!」

その時の 太陽は 返事のように
いつもの倍 輝いていた。


まだ恋愛うんぬんなんて 
知らない頃の話さなんて言ったって
やっぱり未だに あまりにも太陽の輝く日には 
しばらく空を見上げて 立ち尽くしてしまう・・・。

----------------------------------------------------

今年はどうしても外せない用事があったため、「その日」に
「妹」の大好きなひまわりの花を
持って行ってあげられなかった。
来年も同じかもしれない。

でも、僕には分かる。
「妹」はきっとこう言っている。
「大丈夫だよ、お兄ちゃんの気持ちはわかってる。
 心配しないで。ありがとう。応援してるよ!」

ふと通りがかった花屋のひまわりが
風も無いのに 優しく揺れた気がした


(2007年08月30日)


=====


久しぶりに、そっとしまっていた宝箱の底を見た感じ。
あまり多くは語るまい。


もう遥か昔の、暑い夏の日。
小さな、でも何よりも輝く大輪が、そこにあった。

ひまわりの妹は、あれから。
そして、これからも。

僕の中に、ずっとずっと、居てくれるのだろう。


小さな出逢いとちっぽけな思い出だけれども。
彼女の短すぎる生涯の意味のほんの片隅にでもなってくれていたらいいな。


そう願ってやまない。


=====


連日の自動更新にお付き合い頂きありがとうございました!

今後はゆるゆると更新していきたいと思います。

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非公開コメント

いのち

先日、友人が逝ってしまったこともあって、色々色々思うのだけど

自分ならどうするだろう
病の中に居て
人を思いやれるだろうか
会いたい人には会っておけるだろうか
きちんと『言葉』を贈り届けられるだろうか…

結局
その時にならないと分からないんだけどね。


大切な人を
ちゃんと記憶していられる自分で居たいと…思った



またの更新を
楽しみにしています(ゆるりとね…(笑))

Re: いのち→しゃい

自分ならどうなのだろう。

よく思うけれども。

でもね、変な言い方かもしれないけれど、病だとか、
そういう時だからこそ逆に、何ていうのかな、
普段気にしているような事。なかなかいえない事…
しがらみとか小さな事とかが全部吹っ飛んで、
純粋に素直に自分を出せる時なのかもしれない。


そうも思うんだよね。


だから願わくば、そういう時にこそ、思い出せるような。
大切にしたいと思うような人たちに、
出逢いたい。

そういう関係を築きたい。

って、思ったりする。



いつもこっちまで見てくれてありがとねー。

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